情報公開
日本私立学校振興・共済事業団における法人文書の開示決定等に係る審査基準
(平成14年9月17日 理事長裁定)
独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号、以下「法」という。)第10条に規定する開示決定等について、日本私立学校振興・共済事業団(以下「事業団」という。)における審査にあたっては、この基準に基づき適正な運用を図るものとする。
審査基準 目次
1 法人文書に該当するか否かの基準
2 法人文書を特定するための基準
3 法人文書の開示義務
1 個人に関する情報(法第5条第1号関係)
2 法人等に関する情報(法第5条第2号関係)
3 審議、検討等に関する情報(法第5条第3号関係)
4 事務又は事業に関する情報(法第5条第4号関係)
1 部分開示に該当するか否かの基準
1 公益上の理由による裁量的開示に該当するか否かの基準
1 法人文書の存否に関する情報に該当するか否かの基準
T 法人文書(法第2条第2項関係)
1
法人文書に該当するか否かの基準
開示請求の対象となる「法人文書」とは、事業団の役職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録(注1)であって、事業団の役職員が組織的に用いるもの(注2)として保有しているもの(注3)とする。ただし、不特定多数の者に販売することを目的として発行される刊行物(注4)を除く。
(注1)「電磁的記録」とは、電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができ
ない方式で作られた記録をいう。
(注2)「組織的にもちいるもの」とは、次の要件のいずれかを満たすものをいう。
○直接的又は間接的に管理監督者の指示等の関与があったもの
○業務上必要なものとして、他の役職員又は部外に配付されたもの
○他の役職員がその職務上利用しているもの
○組織として管理している共用の保存場所で保存されているもの
○決裁を要するものについては、稟議に付した時点
○会議資料は、当該会議に提出した時点
・事前の予備的会議(打合わせ等呼び方は問わない。)であっても、組織として行われる場
合は、その時点の文書を各々法人文書とする。
○一般文書は、組織として検討に付した時点
○業務に必要な申請書、調査票、届出書等(以下「申請書等」という。)は、当該申請書等が事
業団において接受された時点
○取得資料等は、組織として管理している共用の保存場所に保存した時点
(注3)「保有しているもの」とは、所持している状態をいうが、所持とは、物を事実上管理している
状態をいい、書庫等で保管している場合(保管を他者に委託する場合を含む。)でも、担当部
課等が当該文書を事実上管理していれば所持に当たる。なお、一時的に文書を借用している場
合や、預かっている場合などは事実上管理しているとは認められない。
(注4)次の文書は法人文書に該当しない。
○役職員が単独で作成し、又は取得した文書で、専ら自己の便宜のために利用するもの(自己
研鑽資料、備忘録等)
○自己の職務遂行のために利用する、正式文書と重複する写し
○個人的な検討段階に留まるもの
○絶版になった刊行物であっても、ひとたび市販されたもの
なお、無償で配付される刊行物等は法人文書であり、窓口に置かれる広報用資料等も適用除
外とはならない。
2
法人文書を特定するための基準
法人文書の特定は、開示請求書の「請求する法人文書の名称等」欄の記載における「法人文書の名称その他法人文書を特定するに足りる事項」から、職員が開示請求者が求める法人文書を他の法人文書と識別できるか否かにより判断する。
(1)
特定されていると考えられる例
@ 法人文書ファイル管理簿に登録されている文書ファイル名、又は具体的な文書名の記載がある。
例:○○に関して審議された運営審議会の議事録
A 文書名の記載は無いが、求める内容について具体例の記載がある。
例:平成○○年度経常費補助金の配分方法の見直しに関する文書
B 業務内容及び文書の分類の記載がある。
例:私学情報セキュリティに関する会議録
(2)
特定が不十分な例
@ 一般的な表現、範囲が定まらない記載
例:「○○に関する資料」、「△△課の資料」等
(○○の事柄の具体性にもよるが、一般的には、関連性の程度には種々のものが想定され、どこ
まで含むかは明らかでない。また、△△課のみでは文書の内容が明確にならず、何が必要か判
断できない。)
A 文書をグループ化した記載
例:
「照会文書の一覧」、「助成業務に係る会議関係文書」等
(文書の内容が明確にならず、何が必要か判断できない。)
これらの記載がなされた場合、担当窓口は開示請求者に対し、文書を特定できるよう、情報を提供するよう努めなければならない。
また、「開示請求書」に形式的な不備がある場合も、補正の参考となる情報を提供するよう努めなければならない。
3
法人文書の開示義務
開示請求があったときは、次に掲げる場合を除き、開示請求のあった法人文書を開示しなければならない。この場合、開示する文書は部分開示とする場合の「墨塗り」
等を除き、現況のままを開示し、一切加工してはならない。
(1)
開示請求に係る法人文書の全部に法第5条各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)が記
録されているため、すべて不開示とする場合(不開示情報が記録されている部分を、それ以外の部分
と容易に区分して除くことができない場合を含む。)
(2) 法第8条の規定により、法人文書の存否を明らかにしないで開示請求を拒否する場合
(3) 開示請求に係る法人文書を事業団が保有していない場合、又は開示請求の対象が法人文書に該当し
ないとき
(4) 開示請求手数料が納付されていない場合、法人文書の特定が不十分である場合、開示請求に形式的
な不備がある場合
(5) 権利濫用に関する一般法理が適用されるとき
U 不開示情報基準(法第5条関係)
開示請求の対象とされた法人文書について、不開示情報に該当するか否かを審査するための基準である。
1
個人に関する情報(法第5条第1号関係)
(1)
「個人に関する情報」(以下「個人情報」という。)
@ 個人の権利利益を保護するため、個人識別性のある情報を、一般的に、不開示とする。
個人情報とは、個人の内心(思想、信条)、身体(健康状態を含む。)、身分、地位その他個人
に関する一切の事項についての事実、判断、評価等のすべての情報を含むものであり、個人に関す
る情報全般を意味する。したがって、個人の属性、人格や私生活に関する情報に限らず、個人の知
的創作物に関する情報、組織体の構成員としての個人の活動に関する情報(個人が識別されない場
合であっても、それを開示することにより個人の権利利益を害するおそれがあるもの。)を含む。
個人情報の判断にあたり、原則として、公務員に関する情報と非公務員に関する情報とを区別し
ない。ただし、前者については、特に不開示とすべきでない情報を「ハ」において除外している。
「個人」には、生存する個人のほか、死亡した個人も含む。これは、生前に本号により不開示で
あった情報が、死亡したことをもって開示されることとなることは不適当であるためである。
「本人からの開示請求」について、本法の開示請求制度は、何人に対しても、請求の目的の如何
を問わず請求を認めていることから、本人より本人に関する情報の開示請求があった場合にも、開
示請求者が誰であるかは考慮されない。したがって、特定の個人が識別される情報であれば、本号
のイからハ又は公益上の理由による裁量的開示(法第7条)に該当しない限り、不開示とする。
A 「(事業を営む個人の当該事業に関する情報)」
事業を営む個人の当該事業に関する情報は、個人情報の意味する範囲に含まれるが、「当該事業
に関する情報」であるので、法人等に関する情報と同様の要件により不開示情報であるか否かの判
断をすることが適当である。このため、本号の個人情報からは除外している。
B 「当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるも
の」
「特定の個人を識別することができるもの」の範囲は、当該情報に係る個人が誰であるかを識別
させることとなる氏名その他の記述の部分だけでなく、氏名その他の記述等により識別される特定
の個人情報の全体である。
「その他の記述等」としては、例えば、住所、電話番号、役職名、個人別に付された記号、番号
(口座番号、受験番号、保険証の記号番号等)等が挙げられる。
氏名以外の記述等単独では必ずしも特定の個人を識別できない場合もあるが、いくつかの記述等
が組み合わされることにより、特定の個人を識別することができることとなる場合もある。
C 「(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含
む。)」
ア 当該情報単独では特定の個人を識別することができないが、他の情報と照合することにより識別
することができるものも、個人情報として不開示情報となる。
照合の対象となる「他の情報」には、公知の情報や図書館等公共施設で一般に入手可能なものな
ど一般人が通常入手し得る情報が含まれる。また、何人も開示請求できることから、仮に当該個人
の近親者、地域住民等であれば保有している又は入手可能であると通常考えられる情報も含まれ
る。他方、特別の調査をすれば入手し得るかも知れないような情報は、一般的には「他の情報」に
は含まない。
照合の対象となる「他の情報」の範囲については、当該個人情報の性質や内容等に応じて、個別
に判断する。
イ 識別可能性の判断にあたっては、厳密には特定の個々人を識別することができる情報ではない
が、特定の集団に属する者に関する情報を開示すると、当該集団に属する個々人に不利益を及ぼす
おそれがある場合があり得る。このように、当該情報の性質、集団の性格、規模等により、個人の
権利利益の保護を図る観点から、個人識別性を認めるべき場合があり得る。
D 「特定の個人を識別することができないが、公にすることにより、なお、個人の権利利益を害する
おそれがあるもの」
匿名の作文や無記名の個人の著作物など、個人の人格と密接に関連したり、公開すれば財産権そ
の他の個人の正当な利益を害するおそれがあると認められるものについては、特定の個人を識別で
きない個人情報であっても、公開することにより、なお個人の権利利益を侵害するおそれがあり、
不開示となる。
(2) 「イ 法令の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」
@ 「法令の規定」は、何人に対しても等しく当該情報を公開することを定めている規定に限られる。
公開を求める者又は公開を求める理由によっては公開を拒否する場合が定められていれば、当該
情報は「公にされている情報」には該当しない。
A 「慣行として」は、公開することが慣習として行われていることを意味するが、慣習法としての法
規範的な根拠を要するものではなく、事実上の慣習として公開されていること又は公開することが
予定されていることで足りる。また、当該情報と同種の情報が公開された事例があったとしても、
それが個別的な事例にとどまる限り「慣行として」には当たらない。
B 「公にされ」については、当該情報が、現に公衆が知り得る状態に置かれていれば足り、現に公知
の事実である必要はない。過去に公開されたものであっても、時の経過により、開示請求の時点で
は公開されているとは見られない場合があり得る。
C 「公にすることが予定されている情報」とは、将来的に公開する予定(注5)の下に保有されてい
る情報をいう。ある情報と同種の情報が公開されている場合に、当該情報のみ公開しないとする合
理的な理由がないなど、当該情報の性質上、通例公開されるものも含む。
(注5) 具体的に公開が予定されている場合に限らず、求めがあれば何人にも提供することを予定し
ているものも含む。
(3) 「ロ 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情
報」
公開することにより害されるおそれがある当該情報に係る個人の権利利益よりも、人の生命、健康等
の保護の必要性が上回るときには、当該情報を開示しなければならないこととする。
現実に、人の生命、健康等に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高
い場合も含まれる。この比較衡量にあたっては、個人の権利利益にも様々なものがあり、また、人の生
命、健康、生活又は財産の保護にも、保護すべき権利利益の程度に差があることから、個別の事案に応
じた慎重な検討が必要である。なお、人の生命、健康等の基本的な権利利益の保護以外の公益との調整
は、公益上の理由による裁量的開示の規定(法第7条)により図られる。
(4) 「ハ 当該個人が公務員等である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるとき
は、当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」
法人文書には、公務員等の職務活動の過程又は結果が記録されている場合があり得る。法人の諸
活動を説明する責務が全うされるようにするという観点からは、これらの情報を公開する意義は大
きい。一方で、公務員等についても、個人としての権利利益は十分に保護する必要がある。この両
者の要請の調和を図る観点から、どのような地位、立場にある者(「職」)がどのように職務を遂
行しているか(「職務遂行の内容」)については、たとえ、特定の公務員等が識別される結果となる
としても、個人に関する情報としては不開示としないこととする。
@ 「当該個人が公務員等である場合において」は、個人情報のうち、当該個人が「公務員等」である
場合である。
当該個人が「公務員等」であっても、職務遂行に係る情報が職務遂行の相手方等公務員等以外の
個人情報である場合など、一つの情報が複数の個人情報である場合には、各個人ごとに不開示情報
該当性を判断する必要がある。すなわち、当該公務員等にとっての不開示情報該当性と他の個人に
とっての不開示情報該当性とが別個に検討され、そのいずれかに該当すれば、当該部分は不開示と
なる。
(参考)公務員等であった者が当然に含まれるものではないが、当該個人が公務員等であった当
時の情報については、不開示とはならない。
A 「当該情報がその職務の遂行に係る情報であるとき」
「職務の遂行に係る情報」とは、公務員等が国、地方公共団体又は独立行政法人等の機関の一員
として、その担任する職務を遂行する場合における当該活動についての情報を意味する。例えば、
行政処分その他の公権力の行使に係る情報、職務としての会議への出席、発言その他の事実行為に
関する情報が含まれる。
また、当該情報は、具体的な職務の遂行との直接の関連を有する情報を対象とし、公務員等の情
報であっても、職員の人事管理上保有する健康情報、休暇情報等は、管理される職員の個人情報と
して保護され、職務遂行に係る情報には該当しない。
B 「当該情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分」
公務員等の職務の遂行に係る情報には、当該公務員等の氏名、職名及び職務遂行の内容によって
構成されるものが少なくない。このうち政府及び法人等の諸活動を説明する責務が全うされるよう
にする観点から、公務員等の氏名を除き、その職名と職務内容は、当該公務員等の個人に関する情
報としては不開示としない。
C 公務員等の職務遂行に係る情報に含まれる当該公務員等の氏名の取扱い
公務員等の職務遂行に係る情報に含まれる当該公務員等の氏名については、公表した場合、公務
員等の私生活等に影響を及ぼすおそれがあり得ることから、私人の場合と同様に個人情報として保
護すると位置付けた上で、ただし書「イ」に該当する場合に、例外的に開示することとする。
当該公務員等の職及び氏名が慣行として公表され、又は公表することが予定されている場合に
は、職務の遂行に係る情報について、個人情報としては不開示とならない。
※慣行として公表され、又は公表することが予定されているものと解される例
○事業団の責任により発行する機関誌等への掲載等により職名及び氏名を公表する慣行がある場合
○事業団が公表する意思をもって提供した情報をもとに作成され、一般に販売されている職員録等
に職名と氏名が掲載されている場合
2 法人等に関する情報(法第5条第2号関係)
(1)
「法人等に関する情報」
@ 「法人等」とは、国、独立行政法人、特殊法人、認可法人及び地方公共団体を除く株式会社、財団
法人、社団法人、学校法人、宗教法人等が含まれる。
「法人等の組織・事業に関する情報」は、法人等の組織や事業に関する情報のほか、法人等の権
利利益に関し、何らかの関連性を有する情報をいう。なお、法人等の構成員に関する情報は、法人
等に関する情報であると認められる情報については除くものとする。
A 「事業を営む個人の当該事業に関する情報」
「事業を営む個人の当該事業に関する情報」は、法人等に関する情報と同様に事業を営む上での
正当な利益等について、不開示情報該当性を判断することが適当である。
B 「ただし、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められ
る情報を除く。」
当該情報を公開することにより保護される人の生命、健康等の利益と、これを公開しないことに
より保護される法人等又は事業を営む個人の権利利益とを比較衡量した上で、当該情報を開示する
必要性があると判断した場合は、開示しなければならない。なお、法人等又は事業を営む個人の事
業活動と人の生命、健康等に対する危害等との明確な因果関係が確認されなくても、現実に人の生
命、健康等に対する被害等の発生が予想される場合もあり得る。
(2) 「イ 公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害
するおそれがあるもの」
@ 「権利」
信教の自由、集会・結社の自由、学問の自由、財産権等、法的保護に値する権利一切を指す。
A 「競争上の地位」
法人等又は事業を営む個人の公正な競争関係における有利な地位を指す。
B 「その他正当な利益」
ノウハウや信用等、法人等又は事業を営む個人の運営上の地位を広く含むものである。
C 「害するおそれ」
「害するおそれ」に該当するか否かの判断にあたっては、法人等又は事業を営む個人の性格や権利
利益の内容、性質等に応じ、憲法上の権利の保護の必要性や行政との関係を十分考慮した上で判断す
るすることとし、単なる確率的な可能性ではなく法的な保護に値するか否かを見極めることとする。
(3) 「ロ
独立行政法人等の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたものであって、法人
等又は個人における通例として公にしないこととされているものその他の当該条件を付することが当
該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの」
法人等又は事業を営む個人から公開しないとの条件の下に任意に提供された情報については、当該
条件が合理的なものと認められる限り、不開示情報として保護し、情報提供者の信頼と期待を基本的
に保護するものとする。
@ 「独立行政法人等の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供されたもの」
事業団の要請を受けずに、法人等又は事業を営む個人から提供された情報は含まれない。ただ
し、事業団の要請を受けずに提供の申出があった情報であっても、提供に先立ち、法人等又は事業
を営む個人の側から非公開の条件が提示され、事業団が合理的理由があるとしてこれを受諾した上
で提供を受けた場合には含まれ得る。
「要請」には、法令に基づく報告又は提出の命令は含まれない。
「公にしない」とは、本法に基づく開示請求に対して開示しないことはもちろんであるが、第三
者に対して当該情報を提供しない意味である。また、特定の業務目的以外の目的には使用しないと
の条件で情報の提供を受ける場合も通常含まれる。
「条件」については、事業団の側から公開しないとの条件で情報を提供してほしいと申し入れる
場合も、法人等又は事業を営む個人の側から事業団の要請があったので情報は提供するが公開しな
いでほしいと申し出る場合も含まれるが、いずれにしても双方の合意により成立するものである。
また、条件を設ける方法については、黙示的なものを排除するものではない。
A 「法人等又は個人における通例として公にしないこととされているものその他の当該条件を付する
ことが当該情報の性質、当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの」
「法人等又は個人における通例」とは、当該法人等又は個人の個別具体的な事情ではなく、当該
法人等又は個人が属する業界における通常の取扱いを意味し、当該法人等において公開していない
ことだけでは足りない。
公開しないとの条件を付すことの合理性の判断にあたっては、情報の性質に応じ、当該情報の提
供当時における諸般の事情を考慮して判断するが、必要に応じ、その後の変化も考慮する趣旨であ
る。公開しないとの条件が付されていても、現に当該情報が公開されている場合には、不開示情報
とはならない。
3 審議、検討等に関する情報(法第5条第3号関係)
(1)
審議、検討等に関する情報
事業団は、事務及び事業について意思決定が行われる場合、その決定に至るまでの過程におい
て、例えば、文部科学省と様々な審議、検討及び協議が行われており、その検討事項の内容につい
て、一定の責任者の段階で意思統一が図られた場合、それまでの様々な審議、検討、協議等に関連
して作成され取得したものについての情報は、公開することとなる。
@ 「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」
情報を公開することにより、外部からの圧力や干渉等の影響を受けることなどにより率直な意見
交換や意思決定の中立性が不当に損なわれる場合を想定したもので、例えば、審議、検討等の場に
おける発言内容が公開されると、発言者やその家族に対して危害が及ぶおそれがある場合、又は事
業団内部の政策検討が十分でない情報が公開されることにより、外部から不当な影響を受けるおそ
れがある場合が想定できる。
A 「不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ」
未成熟な情報や事実関係の確認が不十分な情報等を公開することによって、国民の誤解や憶測を
招き、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれのある場合をいう。
B 「特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれ」
事実関係の確認が不十分な情報を公開することにより、投機を助長するなど特定の者に不当な利
益を与え若しくは不利益を及ぼす場合を想定したもので、事務及び事業の公正な遂行を図るととも
に、国民への不当な影響を生じさせないようにする趣旨である。
C 「不当に」
「不当に」とは、審議、検討等途中の段階の情報を公開することの公益性を考慮してもなお、適
正な意思決定の確保等への支障が看過し得ない程度のものを意味する。予想される支障が「不当」
なものかどうかの判断は、当該情報の性質に照らし、公開することによる利益と不開示にすること
による利益とを比較衡量した上で判断することとなる。
D 意思決定後の取扱い等について
審議、検討等を要する情報については、事業団としての意思決定が行われた後は、当該意思決定
そのものに影響が及ぶことはなくなることから、不開示情報に該当する場合は少なくなるものと考
えられるが、当該意思決定が政策決定の一部の構成要素であったり、当該意思決定を前提として次
の意思決定が行われる等審議、検討等の過程が重層的、連続的な場合には、当該意思決定後であっ
ても、本号に該当するかどうかの検討を要することとなる。
また、当該審議、検討等に関する情報が公開されると、意思決定が行われた後であっても、国民
の間に混乱を生じさせたり、将来予定されている同種の審議、検討等に係る意思決定に不当な影響
を及ぼすおそれがある場合等があれば、不開示となり得る。
なお、審議、検討等に関する情報の中に調査データ等で特定の事実を記録した情報があった場
合、例えば、当該情報が専門的な検討を経た調査データ等の客観的、科学的事実やこれに基づく分
析等を記録したものであれば、一般的には不開示とはなり得ない。
4
事務又は事業に関する情報(法第5条第4号関係)
(1) 「次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及
ぼすおそれのあるもの」
@ 「次に掲げるおそれ」のイからトは、各機関等に共通に見られる事務又は事業に関する情報であっ
て、その性質上、公開することによりその適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると考えられるも
のである。
A 「当該事務又は事業の性質上」とは、当該事務又は事業の本質的な性格、具体的には、当該事務又
は事業の目的、その目的達成のための手法等に照らして、その適正な遂行に支障を及ぼすおそれが
あるかどうかを判断することとなる。
B 「適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」があるか否かは、各規定の要件の該当性を客観的に判断する
こととなる。
その場合、事務又は事業がその根拠となる規定・趣旨に照らし、公益的な開示の必要性等の利益
を衡量した上で「適正な遂行」と言えるものであることが求められる。
「支障」の程度は名目的なものではなく実質的なものが要求され、「おそれ」の程度も単なる確
率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が要求される。
(2) 「ハ 監査、検査、取締り又は試験に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は
違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ」
@ 「監査」とは、主として監察的見地から、事務又は事業の執行又は財産の状況の正否を調べること
をいう。
「検査」とは、法令の執行確保、会計経理の適正確保、物資の規格、等級の証明等のために、帳
簿書類その他の物件等を調べることをいう。
A 「正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発
見を困難にするおそれ」
例えば、監査等の対象、実施時期、調査事項等の詳細な情報のように、事前に公開することによ
って適正かつ公正な評価や判断の前提となる事実の把握が困難となったり、法令違反に至らなくと
も妥当性を欠く行為を助長したり、巧妙に行うことにより隠蔽するなどのおそれがあるものは、不
開示となる。また、事後であっても、違反事例等の詳細についてこれを公開した場合、他の法規制
を免れる方法を示唆するようなものは該当し得る。
(3) 「ニ 契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国、独立行政法人等又は地方公共団体の財産上の利
益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ」
@ 「契約」とは、相手方との意思表示の合致により法律行為を成立させることをいう。
「交渉」とは、当事者が、対等の立場において相互の利害関係事項に関し、一定の結論を得るた
めに協議、調整などの折衝を行うことをいう。
「争訟」とは、訴えを起こして争うことをいう。訴訟、不服申し立てがある。
A 「国、独立行政法人等又は地方公共団体の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するお
それ」
事業団が一方の当事者となる上記の契約等においては、自己の意思により又は訴訟手続上、相手
方と対等な立場で遂行する必要があり、当事者としての利益を保護する必要がある。
例えば、
ア 入札予定価格等を公開することによって、公正な競争によりなされるべき適正な額での契
約が困難になり、財産上の利益が損なわれるおそれがある場合
イ 交渉や争訟等の対処方針等を公開することにより、当事者として認められるべき地位を不
当に害するおそれがある場合などは不開示となる。
(4) 「ホ 調査研究に係る事務に関し、その公平かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ」
例えば、
ア 調査研究の途中段階の情報などで、一定の期日以前に公開することによりその成果を適正
に広く国民に提供する目的を損ね、特定の者に不当な利益や不利益を及ぼすおそれのある
もの
イ 調査研究が未だ試行錯誤の段階で、これを公開することにより自由な発想や創意工夫又は
研究意欲が不当に妨げられ、減退するなど、能率的な遂行を不当に阻害するおそれのある
場合には、このような情報を不開示とする。
(5) 「ヘ 人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ」
事業団が行う人事管理(職員の任免、懲戒、給与、研修その他職員の身分や能力等の管理に関す
ること)に係る事務については、当該機関の組織としての維持の観点から行われる一定の範囲で当
該組織の独自性を有するものである。
人事管理に係る事務に関する情報の中には、例えば、勤務評定や人事異動、昇格や人事構想等を
公開することにより、公正かつ円滑な人事の確保が困難になるおそれがあるものがあり、このよう
な情報を不開示とする。
V 部分開示(法第6条関係)
1
部分開示に該当するか否かの基準
(1) 法第6条第1項関係
@ 「開示請求に係る法人文書の一部に不開示情報が記録されている場合」
一件の法人文書の中に複数の情報が記録されている場合に、各情報ごとに、法第5条各号に規定
する不開示情報に該当するかどうかを審査した結果、不開示情報に該当する情報がある場合には、
部分的に開示できるか否かの判断を行うものとする。
A 「容易に区分して除くことができるとき」
ア 当該法人文書のどの部分に不開示情報が記載されているかという記載部分の区分けが困難な
場合だけでなく、区分けは容易であるがその部分の分離が技術的に困難な場合も部分開示の
義務はない。
「区分」とは、不開示情報が記録されている部分とそれ以外の部分とを概念上区分けすることを
意味し、「除く」とは、不開示情報が記録されている部分を、当該部分の内容が分からないように
墨塗り、被覆等を行い、法人文書から物理的に除去することを意味する。
容易に区分して除くことができない場合としては以下の例が想定できる。
○文章として記録されている内容そのものには不開示情報が含まれていないが、特徴のある筆
跡により特定の個人を識別することができる場合
イ 文書の記載の一部を除くことは、コピー機で作成したその複写物に墨を塗り再複写するなど
して行うことができ、一般的には容易である。なお、部分開示の作業に多くの時間・労力を
要することは、直ちに、区分し、分離することが困難であるということにはならない。
B 「当該部分を除いた部分につき開示しなければならない。」
ア 部分的に削除すべき範囲は、文書であれば、一般的には、文、段落等、表であれば個々の欄
等を単位として判断する。
イ 部分開示の実施にあたり、具体的な記述をどのように削除するかの方法の選択については、
理事長が、本法の目的に沿った範囲で、当該方法を講ずることの容易さ等を考慮して決定す
る。
C 「有意の情報が記録されていないと認められるときは、この限りではない。」
ア 「有意の情報が記録されていないと認められるとき」とは、説明責任が全うされるようにす
るとの観点から、不開示情報が記録されている部分を除いた残りの部分に記載されている内
容が、開示をしても意味がないと認められる場合をいう。例えば、残りの部分に記載されて
いる内容が、無意味な文字や数字等の羅列となる場合等である。この「有意」性の判断にあ
たっては、同時に開示される他の情報があればこれも併せて判断する。
イ 「有意」性の判断は、開示請求者が知りたいと考える事柄との関連によって判断すべきもの
ではなく、個々の請求者の意図によらず、客観的に決めるものとする。
(2) 法第6条第2項関係
@ 「開示請求に係る法人文書に前条第1号の情報(特定の個人を識別することができるものに限
る。)が記録されている場合」
氏名等の部分だけを削除して残りの部分を開示しても個人の権利利益の保護の観点から支障が生
じないときには、部分開示とする。
A 「当該情報のうち、氏名、生年月日その他の特定の個人を識別することができることとなる記述等
の部分を除くことにより、公にしても、個人の権利利益が害されるおそれがないと認められれると
き」
個人を識別させる要素を除去することにより誰の情報であるかが特定できなければ、残りの部分
については、通常、個人情報としての保護の必要性は乏しくなるが、個人識別性のある部分を除い
ても、開示することが不適当であると認められるものもある。例えば、カルテ、作文などの個人の
人格と密接に関連する情報等を開示すると個人の権利利益を害するおそれがあるものである。
このため、個人を識別させる部分を除いた部分について、公開しても個人の権利利益を害するお
それがないものに限り、部分開示の規定を適用する。
B 「当該部分を除いた部分は、同号の情報に含まれないものとみなして、前項の規定を適用する。」
第1項の規定により、部分開示の範囲を決定するにあたっては、個人識別情報のうち、特定の個
人を識別することができることとなる記述等以外の部分は、個人の権利利益を害するおそれがない
限り、法第5条第1号に規定する不開示情報ではないものとして取り扱う。
また、第1項の規定を適用するにあたっては、容易に区分して除くことができない場合は、当該
個人に関する情報は全体として不開示の扱いとなる。なお、個人を識別することができる要素は、
法第5条第1号イからハのいずれかに該当しない限り、部分開示の対象とならない。
W 公益上の理由による裁量的開示(法第7条関係)
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公益上の理由による裁量的開示に該当するか否かの基準
(1) 「公益上特に必要があると認めるとき」
法第5条各号の不開示情報の規定に該当する情報であるが、理事長の公正な判断により公開する
ことによって、当該保護すべき利益を上回る公益上の必要性があると認められる場合をいう。
(2) 本条の適用に関しては、公益上特に必要と認めたにもかかわらず、法人文書の開示をしないことは
想定できないが、公益上の必要性の認定についての、理事長の要件裁量は認められる。
X 法人文書の存否に関する情報(法第8条関係)
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法人文書の存否に関する情報に該当するか否かの基準
(1) 「開示請求に係る法人文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとな
るとき」
開示請求に係る法人文書が具体的にあるかないかにかかわらず、開示請求された法人文書の存否
について回答すれば、不開示情報を開示することとなる場合をいう。開示請求に含まれる情報と不
開示情報該当性とが結合することにより、当該法人文書の存否を回答できない場合もある。例え
ば、特定の個人の名を挙げて、その病歴情報が記録された文書の開示請求があった場合、当該法人
文書に記録されている情報は不開示情報に該当するので、不開示であると答えるだけで、当該個人
の病歴の存在が明らかになってしまい、特定の者又は特定の事項を名指しした探索的請求は、法第
5条各号の不開示情報の類型すべてについて生じ得る。
(2) 「当該法人文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否することができる。」
法人文書の存否を明らかにしないで、当該開示請求を拒否する決定も、申請に対する処分である
ことから、処分の理由を示す必要がある。提示すべき理由の程度としては、開示請求者がその拒否
の理由を明確に認識し得るものであることが必要となる。また、個別具体的な理由提示の程度につ
いては、当該情報の性質、内容、開示請求書の記載内容等を踏まえ、請求のあった法人文書の存否
を答えることにより、どのような不開示情報を開示することになるかをできる限り具体的に提示す
ることになる。
また、存否を明らかにしないで拒否することが必要な類型の情報については、常に存否を明らか
にしないで拒否することが必要である。例えば、法人文書が存在しない場合に不存在と答えて、法
人文書が存在する場合にのみ存在を明らかにしないで拒否したのでは、開示請求者に当該法人文書
の存在を類推させることになる。